晩夏、初秋の空を撮る
お彼岸に入り、猛烈な残暑もそろそろ一段落でしょうか。「暑さ寒さも彼岸まで」という諺どおり、週間天気予報ではこの週末には秋の空気に入れ替わるとのこと。
たしかに朝晩は東京でも過ごしやすくなってきましたが、日中は最高気温が30℃を超えますから、まだまだ陽射しが厳しい。しかしこうして少しずつ少しずつ季節が進んでくれると、季節の味わいを深く濃くこころに刻み込むことが出来ますね。
しばし空に浮かぶ雲のダイナミックな姿を無心で眺め、こころの余白を広げようと思います。
東京坂道散歩(半蔵門〜赤坂見附、永田町)
半蔵門、永田町、赤坂、と地下鉄で移動していると、ここが皇居の西側、坂の多い起伏に富んだ地形であることを忘れています。実はこのあたり、江戸時代に名づけられた由緒ある坂の名前も多く存在します。その由来に思いを馳せながら、東京の坂道を歩く。
これから涼しくなっていくにつれ、秋のお散歩コースとして、おススメできます。坂道にもなんのそのという健脚の方にはかなり楽しめるのではないかと思います。
最高気温21℃、そんな五月のある日、東京坂道散歩を敢行した我が家の記憶から。
この日は地下鉄半蔵門駅から赤坂、六本木、そして新橋へ戻るというかなりの強行スケジュールで三万歩越えでしたが、仕事ではしばしば通るものの、移動効率優先で駆けぬけるのが常。休日の人通り少ない道をゆっくり味わうために歩いてみました。
まずは地下鉄半蔵門駅を出て、通い慣れたTOKYO FMへの道ではなく、永井坂を上ります。
太田姫稲荷神社
ここは太田道灌の姫が天然痘に罹ったとき、祈願し、病を治したという伝説の山城国(現在の京都府)にある稲荷神社から一口稲荷を勧請し、分祀した祠らしいといわれています。そのため太田姫稲荷と呼ばれています。ちなみに商業都市として発展してきた現在の東京には600を超える稲荷神社があるといわれています。
さて、江戸幕府がとってきた都市計画や飛鳥時代から脈々と続く神仏習合による仏教寺院と神社を併設するという歴史があります。その歴史がさまざまな文化、習慣を育み、人々の言葉にも「神様、仏様」と自然に口をついて出てくるように日常生活のなかに溶け込んでいきました。また「お天道様がみている」といったような自制のこころ、教訓を受け継いできたともいえるでしょう。
現代に至るまで日本人の生活習慣には意識、無意識を問わず、神事、仏事が溶け込んでいますが、こうした宗教に対する鷹揚さが、実は江戸、東京という都市の発展の歴史に寄与したのではないかと思っています。
格式の高い東京十社しかり、路地裏の祠しかり、街道にひっそりと置かれた石仏しかり。文字通り風水都市江戸、東京において、武士だけでなく、農民、町民たちの暮らしのなかで、先人たちが八百万の神、森羅万象に神性を認め、祈り、崇めてきた歴史と文化。それが神様、そして仏様を大切にもてなすという考え方を育んできたともいえるでしょう。また口にする言葉も大切にする、いわゆる言霊の幸ふ国の伝統を大切にしてきたことが街を歩き、史跡を訪ねるとよく分かります。
とまあ、難しいことはさておき、我が家の散歩は永井坂を上りきり、新宿大通りこと麹町通りを渡り、さらに南へ下ります。するとオフィスビルが立ち並ぶなか、突然空が開けたと思うと、大きな石柱と銅製の鳥居が見えてきます。
平河天満宮
平河天満宮ウェブサイト
縁結びの梅 / 平河天満宮 / 平河天神 / 千代田区平河町
平河天満宮の歴史
菅原道真を主神に八幡宮と東照宮(徳川家康)を相殿の神として祭っています。文明10年(1478)に大田道灌が江戸城本丸内の梅林坂上に勧請したのが始まりと言われ、徳川家康入城後、本丸修築のためこれを平川門外に移り、慶長11年(1606)現在の地に遷座しました。
徳川幕府に特別な格式で待遇され、紀州藩徳川家、彦根藩井伊家の祈願所でもありました。天保15年に氏子町により奉納された銅鳥居や、力石、狛犬が千代田区の文化財に指定されています。梅が天神様のシンボルであるのと同様に、牛(神牛)も天神様のトレードマークです。平河天満宮にも撫で牛が1体、石牛が4体鎮座しています。
御祭神菅原道真公は、承和12年乙丑の生まれということもあり、牛が繰返し噛砕き消化することを学問に擬え、大変かわいがられたそうです。天神様の使わしめ(神牛)の耳元でお願いごとを唱えながら、一番気にかかる箇所をやさしく撫でると、繰返し天神様にお願いしてくださり、撫でた箇所と同じところにご利益があるといわれています。
東京坂道散歩(赤坂見附周辺)
名前の由来は貝坂と呼ばれていた坂道に青松甲斐という方がお屋敷を構えたものですから、甲斐坂とも呼ばれ(読み上げると同じ発音なので洒落っ気も多分にありそうですが)、現在に至っています。
歩く道筋、ビル解体後の空き地に草が生え、そのなかにこんな可憐な花も。
黒田清輝ここに住む
今週のお題「芸術の秋」にふさわしく、日本画家黒田清輝の居住地跡の表示も。
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衆議院議長公邸
民主党政権になって、内閣総理大臣(首相)は三人目ですが、実は衆議院議長はずっと一人のままですね。余談になりますが、首相ほど毀誉褒貶の嵐に巻き込まれる職業はないと年々その思いを深くしております。ポピュリズムのなかの政治家というのも難しい存在だなあと感じます。
特に首相就任後メディアとの蜜月もどんどん短くなる一方で、それ以降は何が何でも叩かないと「金」にならないという商売丸出し、ワイドショー化した政局報道一辺倒の政治ジャーナリズム。政策議論の深まりなど一切お構いなしで、コメンテーターはしたり顔で「政治家の資質」という言葉を上から目線で使う昨今です。それがどうにも安っぽい。
よく考えてみれば、政治家に「人」としての品格、教養、知性、行動力、決断力、矜持、そして愛嬌にルックス、話し方までも云々…聖人君子で英雄で?しかも失敗は許されない?要求が多すぎます。そりゃあそんな人物、求める方が無理な話だと私は思います。同情するわけでもありませんが。
諏訪坂の途中で気になる場所といえば、この夏解体工事が本格化した旧赤坂プリンスホテル、通称赤プリ。何度もいろいろな用途で利用させていただきました。バブル期もその後も…。閉館直前に旧館、新館で仕事の打ち合わせやパーティがあり、従業員の方ともいろいろお話する機会を得たのは何よりでした。
旧赤坂プリンスホテル新館(2012年4月30日撮影)
私は好印象しか残っていませんが、それにしても堤義明さんはいかがお過ごしなのだろうかと、夫婦の会話は堤氏の印象へ。ごく数回しか直接お目にかかったことはなかったものの、その功績を無限に語ってしまうのは、文化、スポーツ、芸能に深い愛情のある、大きな夢を数多く育てた経営者であったからではなかったかと思います。
もちろん「人」の印象とは立場によって感じることはさまざまあるでしょう。この場で議論を喚起する気は毛頭ありませんが、毀誉褒貶相半ば、歴史上の為政者しかり、英雄、文化人、芸能人、経営者しかり、人の評価などというものは移ろいやすく、空しくもある、と思う今日この頃です。
毀誉褒貶に関する名言
- 衆人の毀誉褒貶は多くは私意より出て必ずしも公平を保ち難い。 - 孔子 「論語」
- 毀誉褒貶を越えなければ、一すじの道は貫けない。- 森信三(教育者)
- 紛々たる世の毀誉褒貶を気にしていて何ができる。区々たる世評などに頓着せず、自ら信ずるところに邁進し、自ら好むところに直進し、思う存分の働きをなし、倒れてのちやむのがすなわち男子の本懐ではないか - 大倉喜八郎
- 偉大な人間にこそ毀誉褒貶は舞い降りる。 くだらぬ人間を誰がわざわざ心に留めておくものか。- テオグニス
閑話休題。
本日のBGM
中村由利子「Pastral」
今回も中村由利子さんのピアノで。私の『芸術の秋』はまずは音楽とともに静かに始まります。
中村由利子~The Early Years
2012年6月発売の初期作品をデジタルリマスタリングして発売されたベストアルバム。音の立ち上がりが新鮮で、最新のデジタル技術の恩恵を活かしています。美しい中村由利子さんのメロディ、ピアノタッチ、弦楽器とのアンサンブル、いまから中村由利子さんを聴くならこの一枚が断然おススメです。
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風の鏡 中村由利子
25年前のデビュー作、このアルバムにどれほど癒されたことか。これからの季節、こころに沁みます。
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時の花束 中村由利子
二作目もさらに素晴らしい洗練で楽しませていただきました。予約して発売日に購入したことを覚えています。このアルバムを聴くために、当時としてはかなり無理をして、高額のCDプレーヤー、TEAC製で何割引きかで125,000円(金額も覚えています)に買い換え、愛用していたスピーカーとアンプとのケーブルをすべて交換、スピーカー内部配線もやり直しました。さらに深夜にも聴きたいということでヘッドホンも奮発して、音楽の豊かさに酔いしれた20数年前を思い出します。
- アーティスト: 中村由利子
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 1988/04/21
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