夫婦写真散歩のススメ

歩く速さで、街の新陳代謝や季節の移り変わりをゆっくり、丁寧に味わってみましょう。

東都名物集&墨東花暦2014春

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花のお江戸の名物はこれだ!「東都名物集」

江戸時代後期、世界一の大都市に成長した、花のお江戸では見立てが大流行。前回もそんなお話しをしましたが、

今回は数ある番付のなかから東都の名物を相撲番付表に見立てた「東都名物集」をご紹介します。

全国から人・モノ・金が集まっていた政治・経済の中心地、東都・江戸の名物とはいったいどんなモノがランキングされていたのでしょうか?

江戸で秀逸なるもの、紫染に錦絵。

多き物、火事、稲荷祠に伊勢屋

西 番付
浅草海苔/大森 大関 鮎/玉川・荒川
甘露梅/吉原 関脇 白魚/佃辺
大根/練馬 小結 洗ひ魚/芝浦
生姜/谷中 前頭(1) 芝海老/芝浦
筍/清土 前頭(2) あなご/濱川
胡蘿蔔/大井 前頭(3) 鰌(どじょう)/梅堀
牛蒡/梅田 前頭(4) 鯉/隅田川
菜/三河島 前頭(5) 里芋・蜆汁/向島
蓮飯/不忍池 前頭(6) 厚焼鶏卵/王子
蕎麦/団子坂 前頭(7) 桜餅/長命寺
納豆/永井町 前頭(8) 団子/永代
飾掛豆腐/笹の雪 前頭(9) 飴の餅/目黒
のつぺい/堀の内 前頭(10) 雷おこし/浅草寺
菜飯田楽/浅草 前頭(11) 牡丹餅/麹町
眞瓜/鳴子 前頭(12) かりん糖/深川
茄子/砂村 前頭(13) かる焼/丸山
虫の音/道灌山 前頭(14) 今戸焼/今戸
蛍/落合 前頭(15) 亀山のお化け/浅草寺
時鳥/目白台 前頭(16) 蝶木兎/雑司ヶ谷
蝉の声/向島 前頭(17) 千木箱/芝神明
梅の花/亀井戸 前頭(18) 麦藁蛇/富士詣
張紙人形/亀井戸 前頭(19) 熊手/酉の市
菖蒲/堀切 前頭(20) 菊/染井
躑躅/大久保 前頭(21) 櫻草/戸田河原

こうして番付表をみていくと、上位は「食」が占めています。圧倒的に食なのです。番付下位まで追っていくと、蛍や蝶、ミミズク(木兎)、ホトトギス(時鳥)などの生き物や梅の花、菊、菖蒲、ツツジ、サクラソウなどの花木もランクインしてきます。

それでは難読漢字(当て字)や現在は残っていない地名などを中心に解説しますと、

筍(たけのこ)/清土

清土:たけのこの名産地、清土という地名は現在の文京区目白台あたりにありました。

あなご/濱川

濱川:地名の濱川は現在の品川区南大井付近です。濱川砲台があった場所で立会川に近く、坂本龍馬ゆかりの場所でもあります。

胡蘿蔔(こらふ)/大井

胡蘿蔔:これは「ニンジン」のことです。中国での呼び方で、西域(胡国)から渡来したダイコン(蘿蔔)の意。「こらふ」と読みます。ニンジンの名産地が品川区大井であったことも興味深く感じます。

鰌(どじょう)/梅堀

:読みは「どじょう」です。梅堀という地名は現在使われていませんが、歌川国貞の役者絵に「梅堀ノよし兵衛」があり、現在の日本橋蠣殻町付近にあった掘割りのことを指すのではないかと思います。

牛蒡(ごぼう)/梅田

梅田:いまでは流通量も激減し、食する機会も少なくなった「梅田ごぼう」です。現在の埼玉県春日部市梅田で栽培されていた太いゴボウで、皮がゴツゴツしていますが、肉質は柔らかく、香りがあって味が良いといわれ、江戸時代ではたいそうな人気であったことが分かります。

茄子/砂村

砂村:茄子の名産地は現在の江東区砂町。当時は砂村と呼ばれていました。

蓮飯/不忍池

不忍池:料理書『黒白精味集』(1746)に書かれた「蓮飯」に関する説明を引用すると「蓮の巻葉を随分こまかにきざみ、菜飯のごとく塩少し入れ飯をたき、蓮の葉の大きなるへ釜より直にうつし包み、暫く置て出す也。よき飯也」とあります。

厚焼鶏卵/王子

王子:これは落語「王子の狐」にも出てくる現在も北区王子にある老舗扇屋さんで供された厚焼き玉子のことです。

納豆/永井町

永井町:永井町は芝・増上寺の門前町。増上寺一帯を火事から守るため、町域は何度も幕府から召し上げられ、そこで暮らしていた人たちは移転を余儀なくされた歴史を持っています。この町名は文化八年(1811)二月に起きた大火で事実上消滅しますが、明治初年までは永井町と呼んでいたという記録も残っています。

飾掛豆腐/笹の雪

笹の雪:あんかけ豆腐は現在も台東区根岸で営業を続ける笹の雪さんの名物料理。赤穂浪士や正岡子規とも縁が深いお店です。

のつぺい/堀の内

堀の内:江戸近郊、現在の杉並区堀ノ内にある妙法寺門前の名物であった「のっぺい汁(濃餅汁)」のこと。日本全国に名物料理として存在したのっぺい汁ですが、江戸近郊ではここが有名だったということでしょう。

菜飯田楽/浅草

浅草:愛知県豊橋市の郷土料理で、豆みそのたれをぬった豆腐の田楽に、刻んだ大根の葉を混ぜ込んで作る菜飯を添えたもの。江戸時代東海道吉田宿(現豊橋市)の名物料理として広まったものです。浅草・真崎稲荷あたりに評判のお店があったということです。

眞瓜(まくわ)/鳴子

眞瓜:「まくわ」と読みます。マクワウリのことです。名産地は「鳴子」、現在の新宿区成子坂あたりです。

茄子/砂村

砂村:茄子の名産地は現在の江東区砂町周辺。当時は砂村という地名でした。

かる焼/丸山

丸山:「丸山軽焼、浅草誓願寺門前茗荷屋九兵衛、京都丸山の製を模す、餅かたくしまり風味丸山にかわらず、とあり。」とこのような一文が「続江戸砂子(享保20年刊)」という文献に残っています。上方・京都の食文化の東遷を物語る名物といえるでしょう。

今戸焼/今戸

今戸:今戸焼は浅草の東北部にあたる今戸や橋場とその周辺で焼かれていた素焼の陶磁器です。隅田川西岸に位置するこのあたりは歌舞伎の江戸三座が移転、集中した浅草・猿若町から待乳山聖天、今戸神社、橋場の渡しと当時は有力大名の高級別荘地でもあった場所です。

亀山のお化け/浅草寺

浅草寺:浅草寺仲見世で売られていた江戸小玩具、お土産用のおもちゃです。当時大人気を博したこのおもちゃは割竹で作った台の上に被り物を着けた小さな人形を取り付けたもので、竹片のバネが仕込まれています。このバネによって玩具が一回転すると被り物が外れて別の顔が見える、つまり「化ける」仕組みになっていたため亀山の化物と名付けられました。またの名を「とんだりはねたり」とも呼ばれ、現在も入手可能です。蛇の目傘から助六、河童から狐、太鼓から小猿、提灯から奴など、人形とその変化のパターンにはさまざまな種類があります。

千木箱/芝神明

芝神明:もともとは神社建築で使われた千木(ちぎ)の余材で作ったところからこの名が付きました。江戸の芝神明(=飯倉神社、現在の芝大神宮)で九月の祭礼に売られていた経木製の絵箱のことです。婦人が簞笥に入れて、衣服が増えるまじないとしたと言われています。ちぎびつ・おだいびつとも呼ばれていました。

麦藁蛇(むぎわらじゃ)/富士詣

麦藁蛇:「むぎわらじゃ」と読みます。東京の駒込富士や浅草富士など、各地の富士神社や浅間神社の境内には、富士山をかたどった模造富士や富士塚が造られ、六月一日の山開きの日に白い行者姿の富士講中の者が富士禅定にならって登る風習があり、江戸庶民にも大流行し、一般の参詣者もこれを行っていました。駒込の富士神社では麦藁蛇がこの富士詣の際の名物となっており、これを受けて帰ると疫病にかからぬと言われていました。また水神である龍の使いと考えられる蛇は、水害などの守護神として信仰されていました。水は人間の生活に欠かせない命の源であり、蛇をモチーフにした麦藁蛇を水回りに祀ることにより、水あたり除けの免符として霊験あらたかと評判になり、駒込の富士神社や浅草・浅間神社でも頒布されるようになりました。

躑躅/大久保

躑躅:「てきちょく」と読みますが、植物の「ツツジ」のことを指します。中国で毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足踏みしてもがき、うずくまってしまったと伝えられています。このようになることを躑躅と言う漢字で表しています。したがって中国ではツツジの名に躑躅という文字を当て、日本にもその中国で使われていた名称・躑躅が入って、ツツジと読むようになったと考えられています。江戸時代、現在の新宿区大久保に住んだ鉄砲組百人隊の同心たちが、副業としてツツジを育てていたものを起源としていて、江戸名所図会などでその素晴らしさや賑わいが伝えられています。

この東都名物集は享保年間、江戸幕府徳川吉宗の治世以降の東都、お江戸の名物を相撲番付に見立てたモノです。
江戸時代、文化文政年間や幕末を舞台にすることが多い時代劇を見るときに大いに参考になることでしょう。それではここからは散歩の途中で出会った春の訪れを告げる墨東の植物をご紹介します。

墨東花暦・春

水仙



ふきのとう

開運という名の梅


みつまた

河津桜



彼岸桜



ソメイヨシノの開花宣言もあり、いよいよ春到来。


年度末、消費税増税対応などで慌ただしい毎日ですが、元気で乗り切りましょう。
それではまた。