夫婦写真散歩のススメ

歩く速さで、街の新陳代謝や季節の移り変わりをゆっくり、丁寧に味わってみましょう。

向島百花園の桜

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先週、桜の開花宣言にあわせ、

サクラ咲きました(墨東散歩)と題し、

ソメイヨシノ以外にもサクラ属の花も含め、

墨東に咲き揃った花々、

桜(早咲種)、水仙、梅、杏…

春爛漫を写真で表現してみました。


まず今週は2012年3月31日開花宣言の東京から・・・。

千鳥ヶ淵、ソメイヨシノ「蕾」

そして現代の春告げ、染井吉野は都内開花宣言から8日、この週末は満開。

葛飾区立石(通称:桜通り)ソメイヨシノ満開





すると今週のお題が「桜」。

いい御題です。

となれば満開から散り際までフォローしたくなるのも人情。

今週のお題、先週に引き続き二本連続「桜」でエントリーします(笑)。


ということで、寸暇を惜しんで、向島百花園に出掛けてみました。


春夏秋冬花不断、まさに百花繚乱。
静かな佇まいと手入れの行き届いた園内は大人の散歩に最適の場所です。

向島百花園


大島桜は盛りを過ぎ、江戸彼岸と名付けられた桜の花びらが
風にはらはらと揺れ、舞い散る午後。

オオシマザクラ(大島桜)


新編日本古典文学全集 (12) 竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語

新編日本古典文学全集 (12) 竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語

伊勢物語第八十二段「渚の院」で詠まれた和歌を思い出します。

世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし

この歌を受けて、こう返す詠み人知らずの和歌も素晴らしい。

散ればこそいとど桜はめでたけれ
うき世になにか久しかるべき

平安時代初期、嵯峨天皇の御代に始まったとされる桜のお花見。
勅撰の歴史書「日本後紀」には「花宴の節、これに始まる」とあります。


奈良時代=万葉の時代は梅見が中心であった花の宴。
漢風文化全盛でもあった万葉の時代、春を告げる花は「梅」。
宮廷に文人を集め、漢詩文を作らせていました。


やがて、平安京に移り、在原業平の時代には花見は梅見から桜(ヤマザクラ)へ。
漢詩作りには興味を示さず、国風文化が芽生えてきた時代、
それを支えた一人でもある和歌の名手、在原業平らしい「やまとうた」であります。


花の咲くをもって、春の訪れの喜びを知り、
風雨によって、美しいまま一気に散る桜を惜しむ。


春を愛する日本人のこころには桜の花にひときわ愛着を感じる何かがあります。


最初の和歌は逆説的に桜への深い愛着を詠んだ歌です。


返歌では惜しまれつつ、散るからこそ、桜の美しさはなお一層際立ち、
そのことが素晴らしいのだと核心をズバッと突いて肯定的に返す。

後の世、平家物語冒頭にも影響を与えた無常観、盛者必衰の理で締め、
日本人のこころを捉えて離さない桜の散り際、惜春の情に深みを与える名歌です。


伊勢物語で歌われたこのやり取りには日本人の桜に対する思いの原点があると思うのです。


桜の花を愛で、酒を酌み交わし、風に散る花びらを眺め、
日が暮れるのも忘れて、惜春の情を和歌に詠む。
伊勢物語「渚の院」の段で描かれた春の光景です。

伊勢物語 (笠間文庫―原文&現代語訳シリーズ)

伊勢物語 (笠間文庫―原文&現代語訳シリーズ)

向島百花園のソメイヨシノ

江戸彼岸

ゆすらうめ<バラ科サクラ属>

庭梅<バラ科サクラ属>


ベネッセ古語辞典によると梅や桜などの花に
蜜を吸いに来る鳥を花鳥(はなどり)と称した時代もあり、
向島百花園にもヒヨドリ、スズメなど多数ご来園。

ベネッセ古語辞典

ベネッセ古語辞典

花鳥(はなどり)とサクラ

普段はあまり撮らない野鳥(ヒヨドリ)も今日は風流として。

向島百花園の源平桃


初々しさと可愛らしさと。

柔らかい日差しと花冷えの午後、やや強い風に揺れておりました。

春爛漫の向島、花鳥風月と静かに、無心で向き合った写真散歩でした。

追記(2019年5月16日)

向島百花園の四季を歩いて撮った写真散歩もぜひご覧ください。

向島百花園の初夏

向島百花園の晩夏から秋へ

江戸幕末から明治維新を生き抜いた榎本武揚ゆかりの地、向島の歴史も併せてお読みいただけます。

向島百花園の雪景色

セイコーミュージアム(墨田区東向島)

時計好きの方は向島百花園から徒歩圏内にあるセイコーミュージアムへも足を延ばしてみてください。以下の記事で詳しくご紹介しています。