夏至から七夕へ。
一年で一番昼が長く、雨の似合う花の咲く季節。
農事暦でみても、この日までに田植えを終わらせる重要な節目ですね。
今年もちょうど半分、折り返し地点となりました。
夏越の大祓@白鬚神社(向島)
半年詣りはちょうど一年の半分を過ぎた日に、過ぎた半年の厄、災いを祓い、無事を感謝すると共に、残る半年の無病息災、健康を祈り、神社におまいりする習俗、ならわしです。
夏越の大祓(なごしのおおはらへ)とも、水無月大祓(みなづきおおはらへ)とも言い、日常知らず知らずのうちに犯し、身に付いた罪・けがれ・災いを「人形・ひとがた」に託して、茅の輪をくぐり、心身を清め、残る半年を新たな清々しい気持ちで日々過ごすことができるように、無事安全、無病息災を祈る伝統行事です。
歴史を遡ると、奈良時代にはじまったと記録が残るこの神事。701年、大宝律令によって定められた宮中の公式行事でした。以来100年近くは盛大に行われていたようですが、室町時代、京都を中心に起こった応仁の乱を契機に行われなくなります。
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茅の輪の由来
古来、茅の旺盛な生命力には神秘的な除災の力があると考えられてきました。茅の輪の由来は鎌倉時代中期に書かれた『備前風土記』の蘇民将来(そみんしょうらい)の伝承によります。
素戔嗚尊(スサノオノミコト)が旅の途中、巨旦(こたん)将来という大金持ちに一夜の宿を頼んだところ、断られてしまいます。困ったスサノオノミコトはその兄で貧しい蘇民将来に頼んでみると、有難くも宿を取らせてくれて、豪華ではないもののあたたかい食事で快くもてなされました。
その善行、一宿一飯の恩義を忘れずに、武塔神(むとうのかみ)、素戔嗚尊は蘇民将来と再会した折に「もしも疫病が流行したら、悪疫除去のしるしとして、茅の輪を腰につけると免れることができる」と言われ、疫病から免れることができたという伝承です。
茅の輪のくぐり方
茅の輪のくぐり方は、「水無月の夏越しの祓(はらえ)する人はちとせの命のぶというなり」という古歌を唱えつつ、左まわり・右まわり・左まわりと、八の宇を書くように三度くぐり抜けます。
一年に二度、夏越と年越しに茅の輪をくぐって、無病息災を祈る。ここ数年、参加者が増えているような気がします。
伝統行事に参加したあとは、墨東の花木を記録する散歩で汗をかきます。
墨東花暦2013:夏至から七夕へ
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向島百花園を中心に墨東の花木を愛でながら、こんな言葉を思い出しました。
「花看半開、酒飲微酔。此中大佳趣。」
今日の名言
「菜根譚」洪応明
明代末期の人、洪応明(字は自誠)による随筆集にはこんな一節があります。江戸時代の大ベストセラー貝原益軒の「養生訓」にも引用された文章です。
花看半開、酒飲微酔。此中大佳趣。爛漫ぼうとう、便成悪境矣。履盈満者、宜思之。
※若至爛漫ぼうとうの「ぼうとう」は「酉に毛(ぼう)という文字と、陶のこざとへんを酉へんに変えた文字で成り立つ熟語」です。
それでは書き下してみましょう。
花は半開を看、酒は微酔に飲む。此の中に大いに佳趣あり。もし爛漫ぼうとうに至らば、すなわち悪境を成す。盈満を履むもの、よろしくこれを思うべし。
意味は、「花は半開の状態を見て楽しみ、酒はほろ酔い程度であれば、楽しんだ後の憂いがない。花も十分に開いてしまえば、盛りが過ぎて、花の心なく、やがて散ってしまう。花のいまだ開かないのが盛りである。もし花咲き乱れ、泥酔するに至らば、それはすなわち悪境となってしまう。富貴権勢の盛大な境遇にいるものは、十分にこれを理解しなくてはならない」。
深い人間洞察と教訓に感嘆することしきりの「菜根譚」ですが、中国ではまったくといっていいほど重要視されず、むしろ日本で評価されます。金沢藩の儒者、林蓀坡(1781〜1836)によって文化5年(1822)に前後2巻の訓読本が刊行され、禅僧の間などで盛んに愛読されました。現在も加賀藩前田家の蔵書「尊経閣文庫」にその明本が所蔵されています。
僧侶の間では仏典に準ずる扱いを受け、現在も多くの実業家、政治家をはじめ、川上哲治氏や野村克也氏といったプロ野球界の名将にも愛読者が大勢います。
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貝原益軒「養生訓」
「完璧さを求めない」
大抵のことは、あまり完璧にしようとすると、心の煩いとなって楽しみはなくなる。災いもここから起こる。
また、他人は自分に対して良くしてくれるものだと思っていると、人の行為に満足できず、怒ったり咎めたりして、心の煩いとなる。
また日用の飲食・衣服・道具・住まい・庭や鉢植えの草木などの品々、みな華美なものを好んではならない。少しばかりよければ、事は足りる。
完璧に良い事物を好んではならない。これは私の「気」を養う工夫である。
「養生は日頃の心がけ」
養生の術はまず心持ちが大切である。心を穏やかに平和に保ち、怒りと欲を抑え、憂いと思いを少なくし、心を苦しめず、機嫌を損なわない。これが望ましい心持ちでいるための大切な方法である。
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向島歴史散歩
白鬚橋周辺には源頼朝ゆかりの隅田川神社(水神宮)や榎本武揚が晩年向島に住み、余生を過ごした歴史もあります。以下の記事には歴史散歩に最適のスポットを紹介しています。併せてご覧ください。
梅雨の合間に見た青空を締めに。
それではまた。