父、逝く。
母が亡くなって18年、父が85年半の生涯を静かに閉じました。
いつかは必ずこの日が来ると理解していたとはいえ、ついに見送る日が来ました。父の四十九日法要を終え、心にはポッカリと大きな穴があき、湿り気の高い風が吹き抜ける日々が続きます。
不意によみがえる両親との思い出、四人家族の記憶、どれもが皆穏やかで、優しく、心地よい。
親元を離れ、社会人となり、気が付けば、私はいつも自分自身も含め、何かと闘っているような毎日を過ごしていたのかもしれないと、近年われとわが身を振り返り、そんなことも感じています。
理不尽で、心無い言葉を浴びせる人、平気で嘘をつき、人を裏切ることが出来る人、他人を攻撃することに快感回路を刺激されるのか、喜んで他人を貶めることが出来る人。
そういうことが「日常」ではないにせよ、時折そんな人に出会うと心がささくれ立つことも多く、自分への問いかけも多く、深くなり、齢を重ねてきました。
人は一日に意識・無意識を問わず、さまざまな言葉を五万回も自らのこころに投げかけているといいます。
いまの自分のこころは、自分に語り掛けてきた言葉で、出来ている。
自己肯定感が下がり、自己承認欲求との差が大きくなったとき、人はこころのバランスが崩れる。時にはその崩れがもとで、無気力に襲われることや他者への攻撃にあらわれることもあるとのこと。
安易に否定や後ろ向きな言葉を問いかけると「そういう現実」がやってくる。己をよく知ることなく無理な要求をし続ければ、「出来ない事実」が積み重なる。この重みがこころを追い詰め傷つける。
一方、励まし、癒し、前向きな努力を続けるために必要な言葉は心を強くし、努力が努力と意識しなくても、無理なく続けることができ、「望む現実」を手に入れる可能性が高まる。
病床の父を見て、晩年まで文字通り不屈の精神と弛むことなく、一途に努力の人であったと思います。父は日頃、どんな言葉を自分自身に投げかけていたのだろうか?とそんな問いが何度も脳裏をよぎります。
父が遺したノートの山
父が80歳を超え、過ごした最後の五年間に書き記した段ボールいっぱいになるほどのノートがあります。
- 三年日記(病状、治療のことを克明に記したもの)
- KOKUYOのB5版ノート(時事問題を時系列に自分の言葉で整理したもの)
- リングノート(コンピューターの使い方を整理し、高齢者に教えるためにまとめたもの)
- B6版ノート(晩年の趣味、歌うこと、歌詞と歌唱のポイントをまとめたもの)
楽しみながら、喜びを感じながら、まるで空気を吸うように、気負わず、衒いもなく、自然に努力し続けてきたと改めて感じたのです。
このノートは知識や知見を徹底的に自分の頭の中で整理して、落ち着いて書き残したものでした。
学者っぽい言い方をすれば、見事に構造化された「知」がそこにはありました。
とことん分かりやすく、他人に説明するように、整理されていることに素直に驚き、こころが激しく揺さぶられます。
教育者として最後まで自らの成長に深く集中し、他者への思いやりと効果的なアドバイスとは何かを問い続け、病と闘い生き抜いた父の人生が段ボールいっぱいのノートにあるのです。
これはわが一族の宝として、遺そうと弟家族と共に皆で誓い、仏壇に手を合わせます。
本日のBGM:Coldplay「Daddy」
一曲目は私が今世紀地球上最高のバンドのひとつと思うColdplayの名曲から。
Chris Martinの美しい声がこころに深く届きます(涙)。
父のノートから学んだことを整理してみます。
本質的な深い学びを得るために、どうすれば良いのか?
学ぶ価値を自分で考え、調べ、自ら作り上げる。
他人の価値感に縛られることなく、とことん調べ、考える。安易な答えに飛びつかず、そこでもうひと手間掛けてみる。効率至上主義の罠に陥ることなく、回り道にも意味があると考えてみる。大切なのは自分で作り上げることにある。
目標を決め、しっかりと感情を整え、静かに、そして着実に歩みを進める。
目標はより具体的に。いつまでに何をどうやるか?身近な到達地点を小刻みに設定し、常にゴールを意識しながら、なすべきことを明確にする。ゴールから逆算して「いま」を見つめ、考えることが重要になります。
そして何が障害になるかを冷静に理解しておく。
感情を整える。怒り、自己憐憫、悲しみ、卑下、こうした感情を起こす原因を特定し、自分自身と向き合い、問題解決の道筋をつける。そのためには学習環境の再設計も重要になる。自分がラクに動ける環境を作りましょう。
外部からのフィードバックを大切にし、自らの間違いを愛し、修正することに喜びを感じるこころを養う。
答えが分からないときは不安に苛まれることもある。しかしそれに慣れ、耐える力を身につける。とことん考え、失敗や間違いこそ成長の宝であることを知る。熟練の指導者が身近にいれば良いが、そうでない場合は良い書物(参考書)を見つけることやテストを受けることでフィードバックを得る環境を自ら作り出すように心がけよう。
疑問の大切さを知る。「なぜ」を繰り返し自らに問うことで本質的理解への旅を続ける。
その情報を疑ってみる。「なぜ」という問いを繰り返してみる。その繰り返しが本質の理解へと続く道となる。
さまざまな知見、知識の関係性を見出すことを喜びとし、他の知識や手順と関連付けることで徹底的に整理する。
データが多ければ、全体の構造を見るのにも困難が付きまとう。何らかの道具が必要になる。関係性の把握は学びの助けになる。そのために徹底的に整理・整頓、この作業が構造把握に必ず役立つ。
もう一度、それは正しいのか?静かな時間の中で、落ち着いて再考する。なぜなら学習には間違いや過信が付き物だから。
内省には心穏やかに対象と向き合う時間が必要である。イライラやつまらない嘲りを他人に平気でぶつけてくる意地悪なドリームキラーから逃げましょう。こういう習い性が身に染みついている人から、離れる、近づかない。
こころを前向きに保ち続ける。無理な動機付けに頼らないことも大切。自分を追い込み過ぎない。自分を無理なく、ラクに動かせるコツを見出し、たくさん蓄えていきましょう。
経験という名の引き出しにそのコツをしっかり整理して、いつでもすぐに取り出して、自分をラクに動かしましょう。そうすれば筋肉を鍛えることに年齢は関係ないように、病に侵されていない限り、意志の力もいくつになっても鍛えることができるはずです。
お父さん、還暦もカウントダウンの息子だけど、まだまだ頑張るよ。遺してくれたノートからいろいろ学びましたよ。しっかり成長できるよう、とことん集中するよ。
ありがとう。天に届くかな、この感謝の気持ち。
一枚の写真「越後三山只見国定公園」
父と行った最後の旅行は新潟県でした。
本日のBGM:PART2 Coldplay「Speed Of Sounds」
この曲のLyricsが大好きで、いつも励まされています。
Coldplayの魅力を知るなら、この素晴らしいライブ映像はおススメです。ぜひ一度ご覧ください。
LIVE IN BUENOS AIRES/ LIVE IN SAO PAULO/ A HEAD FULL OF DREAMS (FILM) [2CD+2DVD]
- アーティスト:COLDPLAY
- 発売日: 2018/12/07
- メディア: CD
- 父、逝く。
- いまの自分のこころは、自分に語り掛けてきた言葉で、出来ている。
- 本質的な深い学びを得るために、どうすれば良いのか?
- 学ぶ価値を自分で考え、調べ、自ら作り上げる。
- 目標を決め、しっかりと感情を整え、静かに、そして着実に歩みを進める。
- 外部からのフィードバックを大切にし、自らの間違いを愛し、修正することに喜びを感じるこころを養う。
- 疑問の大切さを知る。「なぜ」を繰り返し自らに問うことで本質的理解への旅を続ける。
- さまざまな知見、知識の関係性を見出すことを喜びとし、他の知識や手順と関連付けることで徹底的に整理する。
- もう一度、それは正しいのか?静かな時間の中で、落ち着いて再考する。なぜなら学習には間違いや過信が付き物だから。
- 一枚の写真「越後三山只見国定公園」
- 本日のBGM:PART2 Coldplay「Speed Of Sounds」