「青春18きっぷ」というJRグループが春・夏・冬の年三回発売している使用期間限定のお得な切符を利用した旅の記録をお届けします。
この切符についての詳しい内容とルールはJR公式サイトでご確認ください。
青春18きっぷ(2019年・令和元年)※随時更新中!
https://railway.jr-central.co.jp/tickets/youth18-ticket/
設定されたJRのルールに従って、いかにお得で有意義な一日を味わうか、これが今回のメインテーマです。
青春18きっぷの旅(今回のテーマ)
そしてサブテーマは三つに絞り、
山梨県大月市にある日本三奇橋のひとつ、猿橋周辺を散策すること
小海線を始発から終点まで乗り、夏の高原の雰囲気を味わうこと
長野県小諸市にある懐古園を訪れること
普通列車・各駅停車、快速電車も利用しつつ、丸一日かけて、東京、山梨、長野、群馬、埼玉、東京と首都圏をぐるりと回る鉄道ぶらり旅+写真散歩です。そのためには当然早起き、青春の朝は早いのであります。
サムエル・ウルマン(Samuel Ullman)「青春」
1945年9月27日、昭和天皇が日比谷の占領軍総司令部にマッカーサー元帥を訪問し、日本の天皇が初めて米国人と並んでツーショット写真を撮った部屋の壁に掛けられていた詩です。
またロバート・ケネディーがエドワード・ケネディーへの弔辞にこの詩の一節を引用したことが紹介されると、日本では松下幸之助氏をはじめ、多くの経営者、財界人が漢詩調の名日本語訳を座右の銘にしたことでも有名となりました。
訳詩の書籍も大ヒット、訳詩をプリントした暖簾や手拭、湯呑み茶碗に至るまで関連グッズが発売されるなど、一世を風靡した訳詩ともいえるでしょう。
それでは以下に引用します。青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相をいうのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、
怯懦(きょうだ)を却(しりぞ)ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、
こういう様相を青春と言うのだ。年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神はしぼむ。
苦悶や、孤疑(こぎ)や、不安、恐怖、失望、
こう言うものこそ恰(あたか)も長年月の如く人を老いさせ、
精気ある魂をも芥(あくた)に帰せしめてしまう。年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
いわく
「驚異への愛慕心」、
「空にきらめく星辰(せいしん)」、
「その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰(きんぎょう)」、
「事に処する剛毅な挑戦」、
「小児の如く求めてやまぬ探求心、人生への歓喜と興味」。人は信念と共に若く、疑惑と共に老ゆる。
人は自信と共に若く、恐怖と共に老ゆる。
希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる。大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、 そして偉大の霊感を受ける限り、人の若さは失われない。
これらの霊感が絶え、悲歎の白雪が人の心の奥までも蔽(おお)いつくし、
皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、
この時にこそ人は全くに老いて、神の憐れみを乞うるほかはなくなる。
それでは、今回の夫婦写真散歩、普段の通勤定期券が使用可能な最寄駅からJR浅草橋駅まで向かうところからはじめます。
日本三奇橋・猿橋へ
携帯用に便利なサイズのJR時刻表を持って、いざ出陣(笑)。
AM5:18 総武線各駅停車で御茶ノ水駅へ。
御茶ノ水駅では降りたホームですぐに乗れる中央線快速電車に乗り換え、JR八王子駅へと向かいます。
八王子駅で中央本線の接続に時間的余裕があったこともあり、改札を出て、少々駅構内を散策。
乗り降り自由の切符はこんな時も便利です。
使用期間が限られている青春18きっぷ(夏季)を利用できる最後の日曜日、9月8日(日)。
我が家と同じように夫婦で、あるいはグループで、または一人でと「青春18きっぷ」利用者を数多くお見かけしました。
1982年スタートの青春18きっぷは鉄道旅行ファンにはすっかり定着していますので、利用方法に関するアイディアもさまざまでしょう。
お得な切符はこれ以外にもいろいろありますが、細かなルール、注意点は発売元である鉄道会社の公式サイトで必ずご確認ください。
JR東日本「おトクなきっぷ」
八王子駅にある中央本線のホームには早朝、そして雨模様にもかかわらず、元気な会話が飛び交っていました。
夏の旅支度、登山や写真撮影旅行など思い思いのスタイルでアクティブな休日を楽しむ乗客で混雑した車内では、スマホ利用者に交じって、JR時刻表や手にしたメモを眺めるアナログ派「青春18きっぷ」利用者も多くお見かけしました。
お天気が雨であることで、それぞれ事前に立てた計画を変更する相談が時折聞こえてきます。
車窓の光景も都心を離れ、山梨の美しい自然に囲まれてくると、すっかり旅気分。眺めているだけでも楽しいものです。
日本三奇橋、猿橋到着
猿橋といえば歌川広重の描いた「甲陽猿橋之図」。広重ファンの方ならば、知らない人はいないでしょう。
鳥沢にて下り猿橋まで行く、道二十六町の間、甲斐の山々遠近連なり、山高くして谷深く、桂川の流れ清麗なり、十歩二十歩行く間にかわる絶景、言語に絶えたり、拙筆に写し難し
歌川広重筆「甲陽猿橋之図」
「甲陽猿橋之図」は、江戸に戻った広重が当地で描いたスケッチをもとに清冽な印象や記憶を浮世絵にしています。猿橋を見上げ、崖の彼方には遠くにそびえる山や家並みと満月。縦長の画面を活かした斬新な構図はのちに世界中を感嘆させます。
橋脚を使わず、両岸から張り出した四層のはね木で支えられた珍しい構造を持つ橋です。
到着後、ふたたび降り出した雨にも盛り上がった写欲は萎えることなく、撮影開始です。
まずは橋の近くにある神社(祠)にもご挨拶。
雨対策もしっかりしていたので、軽快です。
橋の上に立つと、風も流れ、美しい渓谷美が味わえます。
八ッ沢発電所施設一号水路橋
桂川渓谷にかかる一号水路橋は長さ42.7mの鉄筋コンクリート造りの単アーチ橋で、明治45年の建設当時は日本国内最大でした。周辺の景観との調和を重視した凝った意匠は当時の設計・施工者たちのこころを感じます。現在国指定の重要文化財になっています。
しばらくすると雨も止み、明るい曇りという写真撮影にとっては諧調を出しやすいフラットな面光源になってきました。
約1時間半、マイナスイオンをたっぷり浴び、自然のなかの散策を満喫して、猿橋駅へと戻ることに。
AM8:50 猿橋駅に戻る
駅に到着すると、山梨日日新聞の号外がお出迎え。
AP電で伝えられたAFLOのカメラマンが撮影した写真が歓喜の瞬間を見事に捉えています。
AM9:19 JR中央本線 松本行で小淵沢へ
車窓を眺めながら、山梨、長野の新たな旅のプランを話していると、1時間45分ほどで小淵沢駅へ到着。
いよいよ小海線ですが、本日はここまで、次回後編をお届けします。