国道15号線、通称第一京浜国道沿いに面した高台に鎮座する品川神社。
旧東海道品川宿のかつての賑わいを偲ばせる京急新馬場駅に近く、アクセスも良い場所です。
大黒天石像
第一京浜に面した大鳥居脇で優しい微笑みで参拝客を迎えてくれます。
「元准勅祭 品川神社」の石柱と石造りの大鳥居をくぐり、
両脇をしっかりとした石垣で守られた長い階段を上ると、
境内は広々として、古社の風格を漂わせています。
品川神社御由緒
品川神社は、文治3年(1185)に源頼朝が安房国洲崎明神を勧請し、創建されました。天正18年(1590)8月1日徳川家康が江戸城に入り、翌19年11月品川大明神へ5石の朱印社領地を賜ります。(後に南貴船社:荏原神社と朱印争いをおこし、2石5斗ずつニ分)。明治時代には准勅祭社の一社に、現在は東京十社の一社に指定されています。また、本殿には、東海七福神の大黒天が祀られています。
品川神社拝殿
1187年(文治3)に、源頼朝が海上交通安全と祈願成就の守護神として安房国(千葉県館山市)洲崎(すさき・すのさき)明神の天比理乃竎命(あめのひりのめのみこと=太玉命の后・祈願の神)を勧請して祀ったのがはじまりといわれています。その後、北条高時の家来で、武蔵国の守護職であった二階堂道蘊が宇賀之売命を勧請して社殿を再建。1478年(文明10)には太田道灌によって素盞嗚尊(スサノオノミコト)が祀られたといわれています。
品川神社は徳川家とも関係が深く、徳川家康が関ヶ原へ出陣する前に、ここで戦勝祈願し、神前で太々神楽(だいだいかぐら)を奏でたそうです。その甲斐あって、天下分け目の戦いに勝利したといわれ、家康公は御輿と仮面を奉納されています。
また品川神社拝殿裏には「板垣死すとも、自由は死せず」の石碑があって、「自由民主党総裁佐藤栄作書」と刻まれています。実はこの言葉は板垣退助本人が言ったのではなく、小室 案外堂(あんがいどう)の演題『板垣死ストモ自由ハ亡ビズ』から広まったものなのです。
古くから現在に至るまで水陸交通の大動脈として栄えてきたここ品川には南北の天王さまがあり、北品川にある品川神社を「北の天王さん」、南品川にある荏原神社を「南の天王さん」と呼んでいます。毎年6月7日に近い日曜日を中心に南北の天王さま合同の例大祭「品川天王祭」が行われ、江戸囃子源流の太々神楽も披露されます。
阿那稲荷社(末社)
品川神社にある阿那稲荷神社は上社・下社の二社制をとり、上社は「天の恵みの霊」が、下社には「地の恵みの霊」「霊泉」が祀られています。その下社は、一粒の種から万倍の稲穂になる天の恵みをたたえた社で、社にある「一粒萬倍の泉」でお金や印鑑を洗ったり、この水を持ち帰ってお店や家の入口、四隅に注いだりすると商売繁盛するといわれています。
千客万来・商売繁盛の石碑
新東京八名勝とは?
昭和七年(1932)11月1日、東京市は隣接5郡82町村の編入によって、これまでの15区から35区になります。この「新東京八名勝」と名付けられた東京新市域の八名勝を選ぶ計画は、報知新聞社によって東京市拡張を記念する目的と、同社の新聞発行二万号記念とを兼ねて行ったものです。
この選定は、1932年8月から9月の一ヶ月にわたり、報知新聞社が中心となり広く市民から募集し、投票によって決めることになったのですが、連日報知新聞で途中経過を発表し、投票を煽ったこともあり、当時としては空前の盛り上がりを見せ、なんと総投票数は890万を超えたそうです。当時の東京市の人口は約500万人といいますから、その数は驚きですね。結果、池上本門寺が755,614票で第一位となり、今回ご紹介した品川神社は見事三位にランクインしました。
江戸時代に特に栄えたこの付近は交通の要衝として、
東海道を参勤交代で訪れる諸国の大名行列も146藩を数え、
また付近には神社仏閣も多く、旅籠・飲み食い処、遊郭と聖俗併せ持ち、
海にも近かったことで、潮干狩り、釣り、月見の名所でもあったのです。
江戸市中の人々に大人気の場所だったと「江戸名所図会・品川驛」や
歌川広重が描いた名所江戸百景「品川すさき」からもその様子をうかがい知ることが出来ます。
歌川広重作「品川すさき」
江戸名所図会、名所江戸百景を見る、読む、味わうために、おススメの三冊
江戸名所図会を読む
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その後時間の経過とともにどんどん街の景色が変わっていったとはいえ、
北品川の鎮守として高台に鎮座する品川神社は
昭和七年ごろはさぞや見晴もよく眺望が見事な場所であったろうと想像できます。
続 江戸名所図会を読む
この名著に当時牛頭天王社(現在の品川神社)を描いた図会が掲載されています。
四枚の図会をパノラマ仕立てで紹介してくれていますので、とても分かりやすく、
江戸時代「詣人常に絶えず」と文字通り繁盛した稲荷社であったことをうかがい知ることができます。
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さて江戸時代に大流行し、庶民のこころを捉えたもののひとつに「富士講」がありますが、
ここ品川神社境内には富士山浅間神社(末社)と品川富士と呼ばれる富士塚があります。
大鳥居から石段を上る途中からの登山口
写真右端中央付近に見える鳥居が目印です。
階段を上ると左に見えてきます。
※写真をクリックするとオリジナルサイズでご覧いただけますが一合目、二合目という石碑も見えます。
高所が苦手な方や膝腰足首を痛めていらっしゃる方は下りはきついと思いますが、
高さ7メートルの富士塚を一段一段ゆっくりと味わうように登ってみてください。
そんな魅力的な品川神社にお参りして、周辺を歩き見つけた植物を最後に。
第一京浜沿いで見つけた桑の実
タツナミソウ
本日のBGM
Tom Rasely plays Lullaby (Brahms)- fingerstyle guitar
ブラームスの名曲をしっとりと聴かせてくれるTom Raselyの爪弾くギターの音色。
美しいメロディーと響きに酔えます。こころ静かにじっくり味わってみてください。
ちなみにこの動画は演奏者Tom Rasely本人の自宅裏の光景を夕暮れ時に撮影し、
その美しさに触発されて編曲したブラームスの名曲が本人の手によって公開されています。
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